ゲームクリア感想167_夕鬼(PS4版)

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前日譚「夕鬼零」の記事はこちら 


 前日譚の頃からずっと発売を楽しみにしていました。
最近でこそ減りましたが、未だに小学校にいる夢を見る上にたいてい悪夢な身としては、このゲームには親近感を抱いておりました。もっとも自分の場合は夕暮れよりも、曇天か雷雨なのですが……
 ということで、各ストアのサマーセール積みゲーが増えてゆくなか、優先して遊びました。


バージョン 1.01
難易度 NORMAL
クリア時間 約8時間
トロフィー取得率 100%(プラチナ)


【良かった点】


◎夕焼けが射しこむ雰囲気


 やはりこれでしょうね。燃えるような夕焼けと放課後の学校の組み合わせで物語が始まらなかったら嘘というものです。
 考えてみると、学校って窓が多いから空模様の記憶も定着しやすい気がします。学校や個人によりけりでしょうが……
 大人になると夕焼けなんて意識しないと目に留めないですが、子供の頃は体感時間が長かったのもあるのか、夕焼けを今よりも多く目にしていた気がします。かといってそれが所謂「エモい」ものだったかというと個人的にはそうでもなく、むしろ、親が帰宅するまでの放課後に数時間滞在する学童保育が憂鬱で、夕暮れになると心が沈んでいました。気の強い子供に絡まれたりするのが耐え難かったという記憶があります。

 作中の主人公たちも、各々に事情があって家に帰りづらい背景を抱えており、そういう子供たちにとって夕焼けは象徴的なものだったと思うと、本作のメインビジュアルになっているのも頷けるところです。


◎場面緘黙症を取り扱っている(と思われる)


 作中で明言はされていないものの、主人公の「学校では言葉が出なくなる」という主旨の発言や、親の「学校でもそうやって話せればいいのに」という発言などから推察しました。
 当事者としては、クラスメイトの「〇〇がしゃべった!」という反応も含めてあるあるですね。

 作品の意図と違ったら申し訳ないので深くは語りませんが、ゲームという媒体でここまではっきり取り扱われたのは知る限りで初なので、嬉しさがありました。
 (検索したところ、当事者が制作したゲームもありましたが)
 場面緘黙だと他者の内面に踏み込む機会が極端に少なくなるので、いざ踏み込んだら皆自分と同じかそれ以上の辛い背景を抱えていることに驚くと同時に恥じるあたりもリアルですね。会話で相手の感情を小出しにさせて伺うことができないから、他者の本音の重さが違うんですよね。その意味でもステージ構成と相性が良い設定だと思います。


○緊張感に満ちた攻略


 視力は低いけど音に敏感、音に鈍感だけど視力は良いなど、相手によって特性が違うので、常に新鮮な緊張感がありました。全体的に相手側は音に敏感なので、各ステージ後半の鬼ごっこパートを除けば、ダッシュを使ったのは数えるくらいです。

 かといってコソコソしてばかりでもなかなか打開できず、少々ゴリ押しを挟むくらいで丁度良かったです。隠れ場所自体は豊富にあるので。


○入手アイテム持ち越し性


 ゲームオーバーになっても入手アイテムは持ち越されるので、ゴリ押しで鍵を拾ってからその場で倒される→再開位置から鍵を使う扉へ直行という楽が出来ます。
 地味にこれが有り難かったです。


○プラチナトロフィーが取得しやすい


 表と裏を一通りクリアしたら、第5章だけ2回やり直して、表と裏で選ばなかった方の選択肢を選ぶだけです。ストーリークリアとエンディングコンプのシンプルな構成でかなり楽な部類です。



【気になった点】


△操作チュートリアルが一度しか表示されない


 自分が見逃していなければ、オプションなどからも読み直せず、かといって第1章をチュートリアルのために再プレイする気にもなれなかったので、初回プレイはL1やR1連打の呼吸ゲージ減少速度低下を使わずに終わりました。
 微妙に操作が入り組んでいるので、ゲーム内に操作ガイドが欲しかったところです。
  • L1かR1連打で呼吸ゲージ減少速度低下
  • □で深呼吸(立ち止まって呼吸ゲージ回復)
  • △+スティックで視点傾け
 あたりを忘れており、活用できたのは裏ルート攻略からでした。


△エリア切り替えの処理落ち


 慣れれば気にならないとは言え、一度処理落ちしたまま強制終了したので、毎回ハラハラしました。


△周回に不向きなあれこれ


 ゲームオーバー後のロードが約 9~10秒と微妙に長かったり、テキストのスキップや早送りが見当たらなかったりと、周回やトライ&エラー前提の割に快適さにやや欠ける印象でした。

 あと道中でホワイトアウトして発生するイベントは会話の内容がいずれも胸糞悪く、やり直しで何度も見聞きしているうちに気分が滅入ってきました。



【まとめ】


 雰囲気は最上でしたが、正直に言うと期待していた内容とは少し違ったかな、という感じです。予想以上にゲームゲームしており、攻略に脳を使ってストーリーや探索が物足りなかったと言うか、夕闇零のような余韻がそこまで残らなかったのが引っかかります。
 夕闇零のように大半を夕暮れの学校で過ごすものだとばかり思っていたので、病院や日本家屋などが加わったことにより「夕暮れの放課後」のエモーショナルさがそこまで印象深いものにならなかったのが勿体なく感じます。

 なんというか、海外インディーによくあるウォーキングシミュレーター風味の雰囲気重視ホラーADVを勝手に想像していたので、トライ&エラーガッツリの隠れんぼ&鬼ごっこゲームだったのに面食らいました。無論、それはそれで楽しめたのですが。

 あとはストーリーも夕闇零のほうが好きでした。本編たる今作ではちょっと露悪描写に偏りすぎというか。ライターの筆力が高いせいか、妙にリアリティある家族トラブルやいじめ描写に疲れてしまいました。設定的に仕方ないのですが……
 場面緘黙症と思しきキャラクターを主人公にしたのは好ましかったです。

 購入を検討されている方は以下の点に注意されたほうが良いと思います。

  • 雰囲気ゲー一辺倒ではないです。ある程度ゴリ押しが効きますがそれなりのステルスが要求されます。
  • 序盤からそこそこ難易度高めの攻略が始まるので、チュートリアルはメモするか、スクリーンショットなどで保存しておくと安心かもしれません。
  • ストーリーは胸糞描写が続くので、精神状態が悪い時はプレイを控えたほうが良いです。

 ちょっとマイナスな文章が多くなってしまいましたが、同メーカーの新作が出たらまたチェックしたいと思います。ストーリーの筆力やステージの雰囲気作りなども優れていて、なかなかの注目株ですね。



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