先に申し上げますと、巷間の高評価と自分の評価はほぼ同じです。
このゲームに限っては過大評価は存在しないと思うくらい。
2025年最高傑作候補と名高い完全新規RPG。
自慢ではないですが、発表当時から「これは絶対可能性がある! 」と感じ、発売までずっと追っていました。
事前の不安点はほとんどなく、キャラクターがちょっと印象が薄いかも程度(それすら間違いだった)。発売前の動画が出るたびに期待は増す一方でした。発表から発売まで割と間隔が短いのも好印象ですね。
そして2025年4月24日に発売され、勇躍ダウンロード版を購入したところ……
えっ、RPGの世代がまたひとつ進んだ?
というニュージェネレーション到来の興奮に包まれました。ずっと面白く、ラストダンジョンが表示されても本当に最後の最後まで後回しにしてじっくり遊びました。SNSなどに気を逸らさず、久しぶりに集中してRPGを遊んだ気がします。ゲームがゲーム単体で成立していた時代の雰囲気。
もっと言うと、
ライトニングリターンズFF13や
ロストオデッセイやアークライズファンタジアなど和ゲー不遇期のJRPGを再評価+進化させた印象です(ロストオデッセイからの影響は
公言されているようです)。PS3・Xbox360・Wii世代の、コア層は洋ゲー、カジュアル層はWiiやDSに走り、従来までのRPGの影が薄くなっていた時期があると思うのですが(強引な話運び)、その時代がようやく再評価されはじめてきたと言ったら大げさでしょうか。さらに遡ればPS2のシャドウハーツに辿り着くかもしれません。また、これらのRPGはおしなべて曲が良いという共通点があり、そこもしっかり引き継いでいます。
この記事更新を機に切り上げて次のゲームに移るものの、かつてないほど後ろ髪を引かれています。あまりにも面白かったので。
また、ブログ更新が遅れたのもこれが理由です。一通りクリアしてからもこのゲームから離れるのが惜しく、なかなか踏ん切りがつきませんでした。モニターにゲーム画面が映っていないことすらもはや違和感があり、本記事をこうして作成している間もメニュー画面で仲間たちに睨まれています(もっとも、環境や用語チェックのため記事作成時はたいていゲームを点けるのですが)
 |
スタメンはマエル(左)・シエル1(中央)・モノコ(右)でした |
【主なプレイ環境】
ハード PlayStation 5
バージョン ver.1.300.100
難易度 Normal
クリア時間 133:03:01(放置除くと100時間程度? )トロフィー取得率 82%
【良かった点】
◎ダレを生まない圧倒的なバランス感覚
「ここ、これ以上長かったらダレるな」というポイントが先回りして程よく調整されており、ゲーム開始からエンドコンテンツまで程よいプレイ感でした。
ダンジョンは面倒くささが達成感を上回ってしまうことのないボリュームで終わるし、面倒な謎解きやおつかい作業もほぼなく、たいてい戦闘と探索の繰り返しで進められます。サブクエストもクエストリストなどはなく、コンプリートを気にしなければ無視しても気になりません。そもそも量も少ないです。上下の概念があるワールドマップ探索にしても、ファストトラベルがなくても許容範囲な広さで、存外行けるエリアや配置アイテム・ボスも豊富なため常にコンテンツに満ちており、単なる移動時間が長すぎてダレるなどの不満はなし。
ミニゲームを遊べる「ジェストラルの浜辺」にしても報酬はスキン(水着)だし、いずれも気が向いたときにやってコツを掴めばクリアできる難度。エンドコンテンツもいきなり新しいことを要求される展開はほとんどなく、これまで積み重ねてきた戦闘・探索・育成がものを言います。
 |
「これ多分そういうことだな」と予想して実際その通りだったサブクエスト |
とにかくメイン・サブ要素ともにムラがなく、ゲーム終了まで体験濃度がほぼ一定でした。
思わずため息が漏れてしまうような面倒な要素が少ないので、ゲーム途中でスマホに手を伸ばしたりということもそんなに起きなかったです。
◎懐が深く面白い戦闘
完全新規作ながら、戦闘システムの完成度は非常に高いと思います。
取り回しもよく、戦闘の特徴のひとつである射撃(フリーエイム)とコマンドの切り替えもスムーズで、文字通り流れるように次の行動に移れます。
またガイドも優秀で、弱点を突けたりブレイクできたりとこちらが有利になるタイミングではスキル名の色が変わって直感的に教えてくれます。
ちなみに、射撃がフリーエイムと聞いて不安になるかも知れませんが、制限時間はなく判定も甘め、そもそも使う局面が浮遊している敵かあからさまな弱点を持つ敵が出たときに限られているので心配無用です。
そして戦闘の大きな特徴である、コマンド戦闘にソウルライクじみたパリィや回避アクションの導入に関しては、正直なところ戦闘の難度があがったら詰んでしまうのではないかと心配していました。ですが結果としてはなんとかなりました。「コマンドRPGは好きだけど、ソウルライクは苦手なので買おうか迷っている」という方、過度な心配は無用です。
そもそも難易度選択があることに加え、ゲーム序盤すぎあたりから回復手段も豊富になること、レベルがガンガン上がるためレベル上げが容易、ピクトス(とパッシブ効果となるルミナ)次第で不利を有利に変えられるなど幅広い強化可能、など、攻略手段が豊富にあるためソウルライクが苦手でも問題ありません。私もゲーム好きの自認でありながらブラッドボーンの最初の街すら越えられなかったほどのソウル下手なのですが、難易度Normalとはいえ本当の裏ボス除いて大変のエンドコンテンツをクリアできました。
確かに戦闘においてパリィできると爽快ですが、敵からの被弾で総崩れになるのは最序盤かエンドコンテンツくらいで、仲間が揃ってきたらそこまで固執しなくても問題なかったです。自分などは開き直って、メインアタッカーのマエルのピクトスを死亡・蘇生前提で組んでいるくらいです(間違いなくパリィ失敗するので)。
自分の場合、パリィのタイミングに目を血走らせるよりも、各地の探索を細かく行って少しでも多く武器やピクトスを収集して選択肢を増やすほうが重要でした。
またそれだけでなく、戦闘の演出もキマっていて盛り上がります。戦闘突入時の得物を構えながら位置につく動きとか、敵にとどめを刺した瞬間、エフェクトを残したまま即リザルト画面に移行するスタイリッシュさとか、JRPGの文脈を残しつつも演出としてはより洗練されています。
 |
このフィニッシュ画面好き(ポーズ画面の画面効果で滲んでいるけど) |
戦闘の面白さを支えている大きな要素として、育成の手軽さがあると思います。バトルスキルを習得する「スキルツリー」と基礎ステータスとなる「特性」はアイテムで手軽にポイントを振り直せるし、種類豊富なピクトスにしても、装備したキャラクターが戦闘にたった4回勝利すればルミナ(パッシブ効果)が全キャラクター共通のものとなり、専用のルミナポイントを消費して誰でもセット可能となります。
個人的に、このピクトスの育成と組み合わせが悩ましくも面白かったです。とにかく種類が豊富で、キャラクターをどんな方向性で育成しても必ず結果が出るので楽しいです。例えば「自動堅甲」のルミナで戦闘開始時3ターンの間堅甲付与の効果を得て、堅甲付与時に剛力も付与する「堅甲に剛力」のルミナと組み合わせ、そして「ロングパワフル」で剛力の効果時間を2増やし……などと有利なシナジーを探すとなかなか時間が溶けます。強力なルミナ(常時二回行動など)ほど必要となるルミナポイントも高いので、限られたポイントをどう割り振るかも悩みどころ。
更に、これらと武器の組み合わせも大事です。武器は攻撃力のベースとなる一方で付帯するパッシブ効果はルミナ化できませんが、その分パッシブ効果が強力で、武器次第でかなり変わってきます。また「キャラクターの特性に応じてダメージボーナスが付く」という地味ながら重要な効果もあります。私はこのチュートリアルを読み飛ばしてしまったせいで、ダメージボーナスという仕様に気づくのがプレイ時間100時間を越えたあとでした……
 |
育成要素、すべてが有機的に絡み合っていてこういう点も巧い |
このように「スキルツリー」「特性」「ピクトス(ルミナ)」「武器」と4つの育成要素があり、勝てない強敵もこれらの調整を見直すだけで突破できたりする多様性があり、やりごたえがありました。
◎最高のサウンドトラック
ビデオゲームのRPGジャンルの音楽という枠では現時点で世界最高峰なのでは? と思うレベルの高さ。ここまで一作に全力入魂してしまって今後が不安になるくらいです。雑魚戦でもラスボス戦のようなボーカル曲が流れたりしてテンションは最高潮。膨大な曲数なのにどれも良い曲で、しかも作曲者ほぼ一人でこれらの名曲群を作り上げたという末恐ろしさ。いかにも洋ゲー的な背景に徹するBGMではなく、一方でいかにも和ゲー的な耳にしつこいメロディーも控えめで、それぞれの中間・良いところどりです。このゲームを印象付ける一番の要素だと思っています。サウンドトラックはもちろん購入済みです。
また曲そのものが良いだけでなく、使い所もぴったりです。
ダンジョンごとにダンジョン曲、戦闘曲、ボス曲がそれぞれ用意されており、戦闘曲に至ってはリザルト画面で流れるジングル用別アレンジまで用意されています。ダンジョン曲もエリアチェンジで頻繁に曲調が変化して贅沢。FF7リメイクシリーズ並みインタラクティブミュージックを使いこなしているのではないでしょうか。
ちなみに個人的に好きな曲は以下の通りです(一部曲名略)。
・Gestral Summer Party(今年最高の名曲になりそう)
・Until You're Gone
・Lampmaster
・Une Vie A T’aimer
・Dualliste
・Reverence
・Poem D'amour
・Rune
・Clea
◎不快感のないテキスト
テキストの出来が非常にいい。洋ゲーチック嫌味が過ぎる言い回しも少なく、かといっていかにもJRPG的な語彙に乏しい直接表現も少なく、ちょうどいいバランスに感じます。個人的に、このバランスを達成できているゲームテキストは稀有ではないでしょうか。日本語翻訳も丁寧でさほど違和感なし。
特にキャンプ会話で、厳しい世界設定を反映した各人の死生観を垣間見られるのが好きです。基本的には仲間みんな真面目なのですが、だからこそエンディングでエゴが剥き出しになったときの落差がショッキングかつ印象的でした。
【気になった点】
△メニュー画面のUI・UX
頻繁に開くことになるメニュー画面の取り回しがよろしくないのは惜しいです。画面の広範囲にコマンドが広がっているというUIのNGパターンといえるレイアウトで、かつカーソル選択時の反応も薄いため、カーソルが行方不明になりがち。またメニュー画面で強化可能な要素と拠点でしか強化できない要素の線引きがやや曖昧で、慣れるまでなにがどこにあるか混乱しました。
△足場の視認性の悪さ
掴んで崖を登るタイプの足場が背景に溶け込んでいて見逃しやすい傾向にあります。これが理由で2、3回迷子になりました。ワールドマップはあってもダンジョンごとのエリアマップはないので(意図的な設計だろうけど)、見落としに気づきにくい。
△ニューゲーム+が惜しい
発売当時からニューゲーム+が実装されているのは素晴らしいです。引き継ぎ内容も充実しているほうだと思います。ただジャーナルとレコード(キャンプで音楽聴けるやつ)は引き継がせてほしかった。
△ストーリー(特にActⅢ)
中盤までの盛り上がりを上回るような終わり方ではなかったなというのが正直なところです。ストーリーを理解しきってはいませんが、思った以上に内面的というか観念的というかパーソナルな話で、ゲーム序盤にあった世界の終末感・緊迫感とゲーム体験上うまく接続しているようには感じませんでした。匂わせに次ぐ匂わせ、思わせぶりに次ぐ思わせぶりで、最終決戦を経ても腑に落ちず、ネットの有志がまとめてくれた解説や考察を読んでようやく納得しました。
何と言うか、茶番とは言わないまでも、キャラクターも制作者ももう少しあの世界を尊重しても良くないか? と思います。せっかく膨大な世界観設定がゲームに落とし込まれてきたのに、終盤になって設定そのものが素材丸出しで食卓に出されたような感覚で咀嚼が難しかった。
逆に中盤までは良かったです。シレーヌのダンジョンがビジュアル・演出・音楽・戦闘など全要素でピークだったと思います(ボス戦前のムービーから戦闘突入までの展開が完全にキマっていて最高)。もっともゲーム自体の地盤が強固なので、ストーリーがどうあれ終盤からエンドコンテンツまでしっかり楽しめるため、萎えるほどのマイナス点ではないです。
【まとめ】
2025年最高作候補。おそらく年末の賞レースで名前を見ない日はないでしょう。
個人的にも年内最高傑作候補です。今年上半期は色々あって例年よりゲームをクリアできていないのですが、このゲームに一ヶ月と少し費やしたことに後悔はないです(5月5日に初起動)。
いわゆる「死に要素」「ダレポイント」がほとんどなく最後までモチベーションが保たれる上、RPGにありがちなパーティーメンバーの性能差もさほど大きくない印象です。「超強い」「強い」の二種類しかありません。性能・ストーリーともに実質主人公のマエルがいれば安定しますが、クリアだけならどんな組み合わせでも問題ないでしょう。パリィもできなければできないで意外となんとかなります。私も敵の攻撃のほとんどは被弾し、よくて回避という体たらくなので、全体のパリィ成功率を計算したら5~10%程度でしょうがそれでも楽しめました。
なので、少しでも気になるなら購入を迷う理由はないです。難易度選択もあるし、鼻につくテキストもほぼないし、キャラクターの洋ゲー感も希薄です。細かいところで取り回しの悪さはあってもゲーム自体が面白いので許容範囲。ストーリーにしても強いて言えばモヤモヤが残る程度でマイナスではないし、マップの広さも程よくて忙しい毎日の中でもちゃんと進められます。2025年までRPGを追いかけているような人間なら手を出さない理由がないレベル。
ちょっと大げさな話になりますが、AAA超大作でもツウの好む極小規模インディーでもない、中規模RPGがここまでの高評価を得たというのも感慨深いです。この規模のRPGはゲームメディア受けも悪く、またユーザーも過去のスクエニRPGの悪印象を投影したりしてマイナス印象で語ることが多く、全体として過小評価されていると感じていたためです。それ故に、ようやくここに光を当てる存在が現れたのが喜ばしいです。あの時代は忘れ去られるにはあまりにも惜しかった。
続編やDLC……の前に、ニューゲーム+で二周目をやるべきか迷っています。まだモチベーションは残っており、次のゲームに移る前にもう一周やりたいところです。
ただ、一旦落ち着くことにしました。今夏は新作発売が比較的薄めで積みゲーを進める最大の機会だし、もう少しアップデートを確認してからにしようかと思います。
語りたいことの多い作品ですが今回はこのへんにします。また明日の朝もGestral Summer Partyを聴きながら出勤せねばなりませんので……
コメント
コメントを投稿