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SIRENシリーズを人生のオールタイム・ベストに並べている身としては、初報から数年間ずっと楽しみにしてきました。毎日、と言っては嘘になりますが、事あるごとにどんなゲームになるか楽しみにしておりました。と言いつつもグラビティデイズはVITA版体験版も製品版最序盤もしっくり来なくて止めた程度の人間なのですが……
そして、結果としては無事クリアに至ったものの、2周目やトロフィーコンプリートに乗り出すモチベーションは湧かず、という感じです。本来ならこの箇所ももうちょっと文章が埋まるはずだったのですが、どうにも言葉が出てこない。
【主なプレイ環境】
ハード PlayStation 5
バージョン ver.1.0
難易度 NORMAL
クリア時間 約 48 時間(放置時間除けば約38時間くらい)トロフィー取得率 61 %
【良かった点】
◎緻密な世界観
九龍城をモチーフにした世界は期待を超えた完成度でした。ひとつひとつの店や部屋が細かいところまで緻密に作られており、なんとなく見て回るだけでも楽しいです。九龍城モチーフは色々なゲームが採用していますが、ここまで緻密に空気感を再現したのは史上初ではないでしょうか? もっとも私自身はリアルの場所に行ったことがないので正確性は判断できませんが、パブリックイメージとしての九龍城がしっかりと画面の中に広がっていて大変ワクワクしました。
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いわゆるサイバーパンクではなくリアルに根ざした感 |
◎魅力あるキャラクター・クリーチャー
キャラクターに関しては、正直なところ初報から発売前の段階まではそこまで気にしていませんでした。世界観やストーリー、システムなどのほうを重視していたので、今回もSIRENを彷彿とさせる群像劇形式なのかな、
ウォッチドッグスレギオンみたいにお婆さんのプレイアブルがいるんだな、などと感じたくらい(話は逸れますが、SIRENのシステムの後継者はこのウォッチドッグス説を提唱しています)。
それが、いざ実際に操作して数々の死闘をくぐり抜けていくうちに愛着が湧き、ラストバトル間際になるとなんとなく別れの寂しさすら感じました。
一部ムービー除けばパートボイスで、キャラクターによっては出番もそこまで多くないのに操作キャラクター全員に魅力があり、少しでも多くの掘り下げ会話がほしいと思いました。
振り返ると、この会話がひとつひとつは短いながらも魅力をよく引き立てていたと思います。テキスト自体はいかにもフィクションフィクションした言葉選びではあるものの、上滑りすることなく自然な感じで入ってきました。多くが主人公(?)の夜梟(N.O)との会話ですが、たまにキャラクター同士の絡みがあったりするのも面白い。
クリーチャーデザインも生理的嫌悪感と特撮チックな格好良さが同居していて良かったです。 メインの敵で作品のタイトルでもある「野狗子」の完全体なんかはよく観察すると悍ましい造型ではあるものの、ボスらしいスタイリッシュさもあって秀逸。海洋生物や昆虫モチーフなのもSIRENおよびSIREN:NTの頭脳屍人を彷彿とさせて感慨深いです。
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戦闘が終わり、しばし戦いを共にした戦友たちと呆然としている |
◯ストーリー
中盤まではそこまで盛り上がりもなく、正直どうなることやらという感じでしたが、中盤やや過ぎ以降は適度な盛り上がりやどこか懐かしいストーリー上の仕掛けがあり、想像していたよりは印象深いものになりました。ラストバトル(の演出)はシンプルながらシステムと世界観がガッチリ噛み合っていて好きだし秀逸だと思います。
【気になった点】
△戦闘
残念ながら、プレイ時間の多くを占める戦闘が最後までしっくり来ませんでした。リスクを伴う行動のリターンに乏しく、アクションゲームの素人からしても設計がおかしいように感じます。
まずディフレクト(いわゆるパリィ的な弾き)が難しい割にリターンが乏しい。方向指定とボタン押下の両方を成功させる必要があり、忙しない戦闘中では複数の敵に囲まれただけで焦ってますます失敗。そして見事成功して相手を怯ませたところで、得られるのは1~2秒のスタンくらいであっという間に敵は体勢を立て直してしまいます。ディフレクトを連続3~5回くらい成功させると「ブラッドタイム」という時間制限ありのラッシュモードに突入しますが、それだって思うほどには時間の余裕がなく。変にディフレクトを狙うよりも公式指南に従ってバンバンキャラクターを切り替えてちまちま削ったほうがまだ安全です。また、四方八方から攻撃が来る集団戦になるともう……
またほぼすべての敵がいわゆる「スーパーアーマー」標準装備で、ダメージを与えても敵がそう簡単にノックバックしてくれず、どうにも効いている感が希薄です。アクションでこの爽快感の欠如は痛い。主人公たちはほとんど一般人で、一般人が人外相手にそうそう巧みに立ち回れる訳ないというのは理解していますが、それにしても動きが硬い。
あとは起きハメが起こりがち(こちらが有利に働くときもある)、フレンドリーファイアがあるなどの要素も合わさって全体的にストレスが多い。
そもそも戦闘システムがちぐはぐなのではと考えています。公式指南ではモブはバンバン使い捨てて構わない旨が記載されていますが、ゲーム終盤のギミックでは真逆の条件を設定されるので戸惑いました。幸いにも自然と条件達成していたため一発で次のフラグが立ち、そちらに悩まされることはなかったとはいえ、もし条件を満たせなかったらゲームの断念も真剣に検討していました。
△探索要素の乏しさ
確かに九龍城モチーフのステージを散策するのは楽しいですが、個人的にはサイレントヒルやSIRENのようにテキストやコレクタブルが転がっているものだと思い込んでいたので、そういう類のものが基本的にないのはかなり寂しかったです。Ghostwire:Tokyoがそのへん理想的だったので余計に……
もっともそういう要素が削除されている訳ではなく、特定のクリーチャーを倒すとコスチュームなどの報酬が手に入る祠や、スキルポイントが入手できる過去の記憶など、収集要素はしっかりあります。掘り下げに関してはインターミッションの会話に集約されているので、探索不足でストーリー理解に困ることはないです。ただ収集要素に関してはタスクをこなすだけという実感であまりモチベーションが上がりませんでした。
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ステルス要素はほぼオマケ |
【まとめ】
結構落ち込んでいます。作品自体に非があるのではなく、自分がサイレントヒルやSIRENの幻影を追うだけだったいうことが突きつけられて。
今作が楽しみだったのは本当です。ただ実際遊んでみるとどうしても厳しいものがあるというか、世界観の独創性やキャラクター・ストーリーの魅力はあるにせよ、プレイ時間の大多数を占める戦闘と探索がどちらも合わなかったのが手痛いです。
とはいえスタジオの初作品でこの規模のゲームを世に出せただけでも凄いことですし、それ自体は本当に良かったなと感じます。自分に合わなかっただけで間違いなく独創性に満ちているし、戦闘や探索にしたって何も遊べないほどではないので、もうただ自分が合わなかったということに尽きます。コンセプトは大変好みなのですが、いざ実装されたものを触れてみるとどうにも手触りの楽しさに欠けるのが最後まで気になりました。
気になっている方は、ちょうど体験版(本編引き継ぎあり)が配信されているのでそちらを試してみるのもアリだと思います。
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