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結論から言うと、気になっているなら絶対に遊んだほうが良いです。
原作にあたる「サイレントヒル2 最期の詩」を買ったのはいつだったでしょうか。もうすっかり思い出せませんが、普段は行かない沿線駅の構内で、メタリックに輝くパッケージと、シンプルで不穏な説明書を眺めて、背伸びした気分になったことだけは覚えています。攻略本片手にクリアして伝説のin waterエンディングを迎えた後、リザルト画面で流れる「Pianissimo Epilogue」を聴きながら一時間近く呆然としたことも。
そんな何かと思い出深い作品がリメイクということで、不安は少々ありつつも楽しみにしていました。なにしろ高評価な作品なのでいずれはリメイクされるだろうと踏んでいたのですが、肝心のシリーズ自体が長い間休眠状態で、もう諦めかけていたところでした。しかも2リメイクだけではなく他の新規プロジェクトを引っ提げてのシリーズ再始動で、長生きはしてみるものです。
シリーズの話が出たので自分のプレイ歴をまとめると、最終的には初代のプレイノベル版やアーケードを除き一通り遊びました。しかし当時のプレイスキルや根気の問題で、クリアに至ったのは初代・2・4・ゼロ・ダウンプア、そして今年発売されたショートメッセージと今回の2リメイクの7作。ということで、自分の中ではまだまだ遊び尽くしていないシリーズという位置づけです。加えて日本舞台の「f」と舞台不明の「Townfall」というふたつの新作も控えているので、まさにこれからという感じ。
そして本作は、間違いなくシリーズ再始動に向けての跳躍に成功したと思います。すっかり鎮火しつつあったサイレントヒルへの熱が再燃しました。そのきっかけが2のリメイクというのも理想的な流れですね……
【主なプレイ環境】
ハード PlayStation 5
バージョン ver.1.005
難易度 一周目は戦闘・リドルともにNormal、二周目は戦闘HARD、リドルはEasy)
クリア時間 一周目は約21時間、二周目は約16時間トロフィー取得率 60%
【良かった点】
◎大ボリュームのフルリメイク
過度な改変は原作ファンの反発を招くだろうし、あまり派手なことはせず原作のボリュームをなぞる程度に収まるだろうと想像していました。完全に甘かったです。
シンプルに
原作+aの理想的なリメイクでした。原作を見直して遊びやすくしたうえで足し算されているという一番面白く一番ウケがいいやつです。他のリメイク例だと「ポケットモンスターHG・SSや「
バイオハザード:RE2」あたりでしょうか。「
聖剣伝説ToM」や「
SO2R」もそうですね。とにかくその辺りの良作リメイク群に間違いなく入ります。
冷静に見るとそこかしこで改変されているのに、制作陣の原作理解度があまりにも高いため、表層的には原作と違うもののプレイ感は原作(の本来こうだったであろう理想的な姿)という内容です。
そしてゲーム進行やマップ構成、アイテム配置、テキスト、クリーチャーの行動その他諸々すべて再構成され、一作のゲームとしてトーンが統一されており、リメイクながら完全新作の趣すらあります。手元に原作の攻略本を置いていたのですが、エンディングのフラグ一覧以外はほぼ参考になりませんでした。とはいえ原作よりもわかりやすいレベルデザインになっているので、攻略情報なしでも謎解きで苦戦する以外は詰むことはなかったです。
個人的に変えて欲しくなかった部分も多少あるとはいえ、この高い完成度の前では納得するほかありません。
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パブリックイメージとしてのサイレントヒルという趣の画像 |
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パブリックイメージ2。いずれも序盤の画像なのはネタバレを極力避けたいため
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原作の完全版が存在するにもかかわらず、事情があって追加要素なしの原作をリメイクしたという説明がなされるリメイク作品もある中、本作は完全版にあたる「最期の詩」の要素もちゃんと含まれています(某エンディングなど)。肝心の追加シナリオ「Born From A Wish」だけないですが、本編中にあからさまに匂わせていたのでほぼ確実にDLC展開されるでしょう。
実を言うと、本作開発のBloober Teamの過去作品「
ブレア・ウィッチ日本語版」があまり良いと思わず、また2のリメイクにそこまでコストが割かれないであろうと考えていたので、こちらが思う以上に本気のフルリメイクだという事実を体験して己の浅慮を恥じました。
◎街の探索が楽しい
ゲーム発売前の「探索範囲が広くなりました!(実際はそんなでもなかったり序盤だけだったり)」という宣伝文句を信じては痛い目を見がちなのですが、今作に限っては宣伝文句のとおりでした。この時点で制作陣への信頼が増しました。
最序盤からいきなりチュートリアルがてらの街の探索が始まります。これが想像以上に広く入れる建物も結構あり、車やショーウィンドウを割ってアイテムを拾えたりとオープンワールドRPG並みの探索ができます。しかも建造物ひとつひとつが精緻で見ていて飽きない。プレイヤーが頭の中で想像していた、現実と地続きの臨場感あるサイレントヒルそのままで、リメイクだけで夢がひとつ叶ったのに、さらにもうひとつ夢が叶った実感です。パブリックイメージとしてのサイレントヒルが丸ごとひとつ。
あと、個人的にオープンワールドホラーゲーム(?)として高く評価しているダウンプアを彷彿とさせて感慨深くなりました。本当にあの作品は過小評価されている(ダウンプア関連の記事がこのブログで最多アクセスというポジショントーク)。
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入れる屋内も多い |
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裏世界は数少ない光源が映える |
◎刷新されて楽しくなった戦闘システム
なんと、戦闘が楽しいです。
まさかサイレントヒル2にこの言葉を使う日が来るとは予想していませんでした。
システム自体はオーソドックスな三人称アクションADVによくあるやつ(ラストオブアスやアランウェイクあたりのアレ)で、シリーズで言えばHomecomingやダウンプア路線。銃のオートエイムが廃止されたのと、無敵時間長めで優秀な回避が特徴です。
オーソドックスなシステムながら醜怪なクリーチャーの動きをしっかり観察する必要があり、ただ攻撃を連打したり銃を乱射しているだけでは回復アイテムが枯渇する一方。アクションRPGばりに手汗をかくことも多々ありました。
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擬態や角待ち、更には新形態と原作から強化されたマネキン。栄養ドリンク消費の主要因 |
ライトを消して忍び寄るステルス攻略も可能、というか有効です。下手に回避するより背後から急接近してダウンを取ったほうが手っ取り早い時もあり、その見極めも大事です。もっともそれに慣れて突撃ばかりしていると潜んでいた他のクリーチャー複数に奇襲されて作戦がご破算になったりするので注意。
原作はそんな戦闘ゲームじゃないのに、という気持ちもはじめの内はありましたが、ここまでアグレッシブになっても存外恐怖感は薄れず、暗闇はちゃんと怖いままなのですぐに順応しました。むしろ積極的に戦いを挑むくらい。
◎追加エンディング
2種類のエンディングが追加され、原作(最期の詩)の6種類と合わせて計8種類のマルチエンディングとなっています。上の探索範囲拡大と同様、この追加エンディングというのもなかなか信用ならない宣伝文句だったりしますが、本作はここも外しませんでした。原作とは別ライターが書いたエンディングなのに両方とも馴染んでいて浮いている感じもないです。特に片方のは原作エンディングの別パターンのような内容で、少しだけ救いがあるようなないような心に残る内容でした。
ところでホラーゲームの追加エンディング、例が少ないですが全体的に外さない気がします。零〜眞紅の蝶〜とか……
話はズレますが、上記の追加エンディング含めた特殊系エンディングはフラグが原作から変わっているので注意が必要です。最序盤で見過ごすとリカバリーが効かないので、RebirthとUFOのフラグを見逃した自分も3周目が確定しています。
◎日本語・英語ともに秀逸な演技
一周目日本語、二周目英語で遊びました。どちらも演技が素晴らしく、両方の演技を味わうために同じエンディングをそれぞれ二回見たりしました。両方の音声で体験そのものが違ってくる印象です。
音声だけでなく、キャラクターの表情も真に迫っていると思います。正直原作は今にして思うと表情が過剰で、その辺が抑制されたのもあって新鮮でした。ただ抑制されただけでなく、アンジェラやエディーに顕著な精神を病んだ人の表情筋の硬さまでしっかり再現されていて、色々心当たりがあって身につまされました……(特にエディー)
◯充実したアクセシビリティ
予想の倍くらい細部まで設定項目があって感心しました。
霧や暗闇といった視認性の悪さが作品の魅力に繋がっているシリーズなので、ホラー耐性やモチベーションとは別の要素でプレイを断念したプレイヤーもいたと想像します。
今回はその点をアクセシビリティの充実によってサポートしており、誠実さを感じました。これ(視認性の悪さや不親切さ)が作風だ! と押し切る選択はせず、なるべく多くのプレイヤーが楽しめるように選択肢を増やす選択をしたところが。メジャータイトルの責務、とも言える気がしますが、正直日本の開発会社だったらここまでプレイヤーに設定を委ねたりしない気がします(日本のオタク業界はクリエイターファーストの風潮が強いのもある)。
特にハイコントラストモードはキャラクターやオブジェクトを丸ごと色分けして表示する大胆なモードで、私も本作で初めて体験しました(他のゲームにもあると思います)。
これを使うとアイテムやクリーチャーの位置も丸見えで攻略がかなり楽になります。凡百のクリエイターなら僅かなプレイヤーへの配慮でゲームを損ねたくないと拒絶しそうなところ、難易度が下がりすぎてしまうことを覚悟の上で選択肢を用意したのはプロ意識を感じます。そもそもゲーム自体の完成度が高いので、選択肢を増やしたところでゲーム内容はびくともしないという。アクセシビリティに取捨選択はないというのを学びました。
【気になった点】
△一部テキストの改変
原作テキストから予想以上に改変されたなという印象です。改変は良いのですが、原作テキストのリズム感からなる味わいが希薄になって、常識人が考えた異常の範疇に収まってしまった感があり、どうにも勿体なく思えます。有名な「ここに穴があった。今はもうない」のテキストも二行だけで十分なのに、変に崩した表記にしたせいでチープになっていると感じます(スクリーンショットを貼ろうと思いましたがやめました。ゲームで見てこそのテキストと思い直したので)。あと病院の『屋上に落ちていた日記』や原作だとアパートで読めた(今回は別の場所にある)『死という結論』のテキストも原作のほうが良かったです。
繰り返しますがテキストの改変は問題ないです。そもそもグラフィックの説得力が圧倒的に高まったのだから、テキストもそれに合わせて変わるのは仕方ないと思います。気づいた限りですが、本編中に「殺した」など殺人の直接的な表現はほぼ出てこなかった(強いて言えば後半のボス戦くらい)のも、キャラクターが何をしたかはイベントなり拾得物なりから想像できるので、テキストで表すとしつこくなるという判断が下されたのだと思います。
それはそうとして、日本語テキストは原作の時点で高い完成度を誇っていたのだから、そこは手を付けなくてもよかったかな、と感じます。
とはいえ、制作陣もそう思っていたのかしっかりそのまま残してくれている部分もあるので、残念だけど仕方ないかなと。
△原作でのダレるポイントはそのまま
原作でも中盤の刑務所と迷宮はダレポイントでした。暗くて迷う上にマップも単調で見応えも薄く、迷宮に至っては面倒なパズルがあって毎回ここでダレました。
今回はマップそのものやいわゆるレベルデザインが見直されたのもあり、この箇所もスッキリしたものの、その代償にお使い感が増してしまったのでやっぱりダレポイントでした。とはいえ設定的に重要なシチュエーションなので飛ばすわけにもいかないでしょうし、心理的負担が軽減しただけでも納得しています。
△あの曲が未収録
今回「Pianissimo Epilogue」が流れないような気がします。公式のサウンドトラック試聴動画を聴いてもそれらしき楽曲はないですし。曲名もアレンジも変わって自分が気がついていないだけかDLCに回される可能性もありますが……結構思い出深い曲だったので正直ショックでした。
【まとめ】
あまりにハマったのでこの項目で書くことがないくらい言い尽くしてしまいました。
予想以上のクオリティかつボリュームで、体感としてはRPGを一作クリアした気分です。テキストの改変具合や戦闘システムの一新など、全体的にFF7リメイクプロジェクトのプレイ感に近いかも? 正直
FF7リバースと並んで今年のGOTY候補です。個人的に原作から変わって残念な点もあれど完成度の高さで満足してしまうあたりも似ています。
今作にしても、中盤が少しダレるかもくらいで、序盤からエンディングまで過不足なく楽しめました。謎解きもeasyやnormalなら程よいです。とはいえアパートの金庫のヒントとホテルの暖炉左上のキーアイテムはもうちょっとわかりやすくなると好ましいです(二周してどっちも引っかかった)。
未回収のエンディングが2つあるので、ほぼ確実に配信されるであろうDLCのタイミングで着手しようと考えています。本編にも何かしらアップデートがあるかもしれないですし。あとはfとTownfallのどちらが先に発売されるかですね。それとは別に、今作の好評を踏まえて他作品のリメイクも進行していそうです。もしやるとしたら人気や知名度から察するに大方3なのでしょうが、実機でしか遊べない旧作が多いので、正直どれもリメイクかリマスターされてほしいところです。
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