ゲームクリア感想337_Tides of Tomorrow (PS5版)

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同開発作品記事↓ など


名作「Road 96」で名高いDigixArtの完全新作と聞いて飛びつきました。発売はTHQ Nordic。予想以上に発売が早かったのも好印象。一周目は、大多数のユーザーが選ぶ(穏便に進めていると大抵ここに至る)正統派の協力重視ルート、二周目は愚かな人類に見切りをつけた環境保護活動家兼サバイバリストのロールプレイでクリアしました。使う人がいるかは不明ですが、下記にシード(8桁のコード)を貼るのでご活用ください。

9923-3889
 (人間志向。協力的。割とスクラップを残したり、可能な限り善人の行動をしたので後続プレイヤーは僅かに楽かも)

7404-9666
 (自然志向。サバイバリスト。自然保護最優先でキャラクターと軋轢を発生させたり、人間の愚かさに罰を与えるために資源の多くを独占したので、同類でない限り後続プレイヤーは苦労しそう)
 

【主なプレイ環境】
ハード PlayStation 5
バージョン 1.004.0
クリア時間 約 30 時間(一周各15時間程度)
トロフィー取得率 61 %


【良かった点】


◎強烈な世界観


海洋ポスト・アポカリプスの世界観が秀逸です。鮮やかで強烈なビジュアルの中にプラスチックによる環境汚染などの社会問題をスムーズに落とし込んでおり、ボート移動やサバイバル要素など各種ゲームシステムともしっかり絡んでいるので世界観に説得力を感じます。これまで自分が遊んだゲームの中では「Highwater」が近いかも。

このゲームシステムはお馴染みの選択分岐ADVをベースに、「プラステミア」と呼ばれる病気の進行を「オーゼン」という薬で遅らせるサバイバル要素があります。この薬は貴重で入手手段が限られ、店売りのものも高値かつゲーム進行に比例してさらに高額になります。後半になればなるほど価値が上がるため、他者に分け与えるか、自分で独占するかの厳しい判断が要求されます。

鮮やかな色彩だけど終わりつつある世界

文明と自然の交差

このジレンマを積み重ねた自分らしい選択の結果が、人類志向や自然志向、サバイバリストなど各5種類のステータスに反映されます。各ステータスごとに4レベルまで上げられ、上位レベル限定の選択肢もあるため、スタンスを明確にしておくとピンチの状況でも起死回生の選択を取りやすいです。
文章で書くと複雑そうですが、基本は自分が取りたい選択肢を選ぶだけです。

発売前の公開情報以上に多様なロケーションがあり、なかなか作り込みも細かいです。探索でスクラップ(通貨)やアイテムを集めるのも重要になってくるので、隅々まで見て回りました。

行動の結果は右のステータスに蓄積される(画面の四隅が紫色なのは別件で死にかけのため)


◎ブラッシュアップされた非同期システム


名作Road 96のシステムを更に磨き上げた印象です。まずゲーム開始時に誰かひとり他プレイヤーを選びます。すると自分が訪れる土地ではその他プレイヤーの取った行動の結果が反映されており、他プレイヤーが誰かと事を構えていたら現地の警備が強化されたり、誰かに善行を働いていたらその人物から報酬が得られたりします。他にも、前任者と続けて解除することで開く扉や、前任者が踏んだため壊れやすくなっている足場など、攻略上も多少の影響があります。どんな展開を迎えても基本的に詰むことはなくクリア可能です。

またステージ各地の「時潮」にインタラクトすると、選んだ他プレイヤーの取った行動がレースゲームのゴーストのように表示され(実際にレースのミニゲームもある)、より他者の存在感が増しています。

最序盤の選択


これも最序盤。ワンステージ(レベル)クリア後に行動の結果が表示される


加えて、自分にも「シード」と呼ばれる8桁のコードがプレイのたび割り当てられるので、自分のプレイも同様に後続のプレイヤーへ影響します。例えば、スクラップ(通貨)をやオーゼン(残機回復のようなアイテム)を残したりすることも可能です。何を受け継ぐか、何を残すか。あらゆる創作物で繰り返し語られてきたテーマと真正面に向き合っています。自分の前後のプレイヤーという小さい範囲でも、それが連綿と受け継がれるとしたら何かが良い方向に変わるのではないかと思わせてくれます。

ちなみにオンラインチャットやリアルタイム交流などはないので、オンラインが苦手な身でも問題なく楽しめました。

贅沢を言えば、自分が何人の後続プレイヤーにフォローされたかや、同じ選択をしたか否かなど、自分がどういう影響を与えられたかも判ればより有意義でしたが、あまりやりすぎても気楽さが失われてしまうので、このくらいの距離感でもこれはこれで。


◎サウンドトラック


海のゲームと言うと環境音のイメージがありました。しかし本作はかなり音楽に力を入れており、各ステージで流れる曲はどれも良かったです。音楽ジャンルに明るくなくて正確な説明ではないと思いますが、カリブ音楽
もちろん、波の音色を静かに楽しめる時間もあります。目的地決定前の船上では環境音しか流れないので存分にChillできます。大海原の上に一隻とひとり、果てしないプラスチック汚染の海を眺めながら……


◯全体的なカジュアルさ


良く言えばカジュアル、悪く言えば薄い、その中間なら広く浅くのゲーム内容です。
メインの3D操作ADVをベースに、ステルスやレースや海戦、簡単なパズルなど複数のモードがあり、そのいずれも難しすぎることはないので気楽に楽しめます。

特にレースと海戦は本格派とは言えないながらもなかなか白熱し、悪くない感触でした。特に海戦はこういうカジュアルなものをあまり見ないので自分としては新鮮。このあたりはRoad 96の前日譚であるRoad 96:Mile 0に近しいプレイ感覚でした。勉強不足でしたが、そもそも開発会社のデビュー作はリズムゲームの「Lost in Harmony」なのでMile 0のほうが原点に近かったのですね。ちなみにリズムゲーム要素は今回ないです。

また、操作性も悪くないと思います。不足なくかつ良好寄りという感じ。梯子を裏側から上ろうとしてもちゃんと対応してくれたり、ボートをしっかり接岸しなくても接近するだけで自動で停泊してくれたりと親切です。

海戦がシンプルながら面白い

【気になった点】


×リプレイ性の低さ


比較的周回推奨ゲームの割に不親切な点が目立ちます。個人的にこれが結構辛いです。
まず、システム上致し方ない点もあるのですが、イベントスキップや会話早送りができないです(自分が操作を見逃していなければ)。引き継ぎ要素も各キャラクターごとのイベント達成度と、ボートアクセサリーアイテムのアヒルの入手状況くらい。この手のゲームではむしろ揃っている方と言われたらそれまでですが……

また一周が10〜15時間程度とそこそこ長いため周回突入にやや勇気が要りました。
それでもかなりサクサク進むタイプのゲームではあるとはいえ二周遊びましたが、それでもイベント全クリアや真相到達は叶わなかったため、可能ならアップデートなどで会話早送りやムービースキップ(ステージ到達時の地名表示ムービー)が実装されると今後の周回もより捗ること請け合い。



△やや不安定な動作


性別設定が勝手に切り替わったり、地形ハマりや意図せぬ侵入によるフラグミスが発生したり、日本語訳が若干不安定だったりと、プレイに大幅な支障は来さないが体験としては快適でないということがちょくちょくあります。幸いにも最終セーブからのやり直しとレベル(ステージ)自体のやり直しの両方が用意されているので完全な詰みには陥らなかったものの、何回か肝が冷えました。

個人的には時潮の発生場所が重なりがちなのが気になりました。重要イベントが発生する地点に重なっていることが多いのとほぼ同じ表象のため誤操作を誘発しやすく、意図しない方を誤って展開したらイベントスキップ不可の罠が待ち構えており、10秒ほど無為な時間が発生します。


△釈然としない導入

正直、ゲーム起動時の説明が不足していると思います。


ゲームを始めるといきなり「見知らぬプレイヤーを誰かひとり選んでゲームを始めよ」と突きつけられるのですが、初起動時点では判断材料に乏しいため困惑しました。6〜7パターンのビジュアルと、選択傾向5パターンから抜粋された2パターン、それと最終プレイ日くらいしか目ぼしい情報がありません(この中だと選択傾向が比較的重要情報なのですが、ゲーム初起動時点ではその情報の意味が理解できるはずもなく)。
サジェスト機能もあり、フォロワー数上位のプレイヤーなどがサジェストされますがそれに従うのも芸がないので、私は性格診断的に自分が取るであろう選択傾向に近いプレイヤーを選びました。それも「この人についていきたい! 」という熱量ではなく、まぁ取り敢えず誰かしらを選ばないと始まらないから…くらいの熱量でした。釈然としないままオープニングに突入したので、ゲームが軌道に乗るまで「これで本当にいいのか? 」という不安が大きかったです。

親しいフレンドがいるなら別かも知れませんが、フレンドと繋がって遊ぶタイプのゲームとは少し違うし、むしろオンラインとかマルチプレイの類が苦手なプレイヤー(私です)が好むジャンルだと思うので、もうちょっと情報があれば納得ずくでゲームを始められたと思います。ある程度のネタバレ覚悟の上で「あなたに近い性格の誰かを選んでください」のレベルに噛み砕いた説明があっても良かったかも。

なんだか思ったより長文となりましたが、本作がゲームとして塩対応(海だけに)というよりも、自分が他者を誰かひとりだけ選ぶということに抵抗感が強いのが原因なのかも知れませんね。Road 96みたいに自分の分身を選ぶなら兎も角、他者をひとりだけ選び取るというのは一大事なので。偶発的な出会いが忘れがたい思い出になるのも理解しますが、材料が揃わないうちに他者に対してアクションするのはやはり勇気が要ります。

ちなみに選んだプレイヤーは移動先選択のたびにいつでも乗り換えられるので、なんか自分の方向性と違う前任者だったとしても心配無用です(おそらくクリアするだけなら)。


【まとめ】


良作だと思います。インパクトのある世界観は勿論、非同期オンラインを活用した仕掛けが秀逸でした。その中でも合言葉の仕掛けや儀式の仕掛けは感心しました。後者は、大抵のゲームでおまけ要素に落ち着きがちなエモートのシステムにこんな活用の仕方があったのか! と唸りました。

とはいえ、ゲームとしてはRoad 96ほどのカタルシスはなかったのも正直なところです。メッセージに満ちたスケールの大きい話をしっかりまとめ上げていると思いますが、比較的卑近な設定だったRoad 96と比べると、ファンタジー色がどうしても滲み出てしまい選択の緊張感が薄れがちというか、最終的には大きな話に着地することが予測できてしまう面はあったように思います。選択系ADVは想像以上にリアリティが重視されるのではないか? と気付かされました。

また、システムの根幹部分でもう少し進化を期待していました。特にリプレイ性向上は優先して欲しかった。今回は一周が長めなので尚更。

そして特にマイナス点ではないのですが、世界観設定や用語。キャラクターの雰囲気までが似たような設定の作品(ホライゾンシリーズなど)と被りがちのも気になりました。プラスチックゴミと明るい海の明るいビジュアル、海戦、プラステミアの設定などオリジナリティは担保されているとはいえ。キャラクターの性格も全員「この手の洋ゲー」お馴染みの類型で、その類型から大体の言動や行動が察してしまうくらい。

一方で操作性の向上、サウンドトラック、気楽な非同期オンラインなど進化した美点も多々あり、価格分は確実に楽しめました。恐らくDLCは出ないと予想していますが、一作で終わらせるには惜しいポテンシャルを秘めているので、DLCでも続編でもいいので次に繋がってほしいです。


……と普段通りまとめたものの、正直なところ本作の肝はカジュアルな各ゲーム要素の体験そのものより、ゲームを通じた人と人との信頼の再確認・再結合にあると捉えています。上述の合言葉のギミックで前任者を信じた結果報われたのは本当に嬉しかったし、儀式のギミックで前任者の意図を汲めず失敗してしまっても、たかだか一度コミュニケーションを失敗したくらいでゲーム(主人公のタイドウォーカーにとっては人生)は終わらないので、失敗を糧に別の機会でコミュニケーションの再挑戦を繰り返す、そのゲームプレイにすごく可能性を感じました。ゲームとして気になった点はあるものの、自分で書いておきながらなんですがこの可能性に比べれば些事です。

ラストでは案の定、この手の選択分岐ADVらしい苦しい選択を迫られますが、どれが正しいというよりも、信頼を積み重ねた果てに出した答えならそれが結末であると考えています。
個人的には二周目に迎えた自然志向エンディングが好きです。キャラクターから罵倒されることを覚悟で選んだものの、いざ迎えてみれば最後の台詞にじんわりきました。

あと、ゲーム中は世界観説明用のフレーバーかと思っていたとある演出が最後の最後で意味を持つの、おおっと唸らされました。




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