ゲームクリア感想312_聖剣伝説 ヴィジョンズオブマナ (PS5版)

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過去作の記事は↓


3ToMで華麗にシリーズ復活を果たした、と思いきや次の新作は何度目かのアプリで、案の定短期間でサービス終了を迎え、次に来たのは聖剣LoMリマスターで、やっぱりこのシリーズの今後は厳しいのか……と悲観的になっていたら完全新作ということで購入しました。
発売日じたいは昨年で、その当時体験版を遊んだ結果どうにも今一歩な印象で、せっかく予約購入したというのにずっとライブラリの肥やしにしてしまっておりました。PS5ストレージ残量もキツくなってきたし、容量重めのゲームから順次手を付けようということで今回クリアと相成りました。

こう書き出すと本作への熱量が低いように思えますが、率直に言うとその通りで、体験版段階では典型的なおつかいJRPGという印象が強く、シリーズの魅力であるBGMもピンとくるものはなく、いざ製品版スタートから中盤くらいまではそこまで期待が膨らむこともなかったです。ストーリーもさほど惹かれず、まぁオープンワールドでもないしそこまでクリアに時間はかからないだろう……と平熱なテンションで進めていたらいつの間にか熱中していた、という感じでした。ゲームプレイ体験としては普通のことだとしても、近年は可処分時間を鑑みて、今後の続行のモチベーション維持が難しいと判断したら最序盤でやめるので懐かしい感覚でした。

【主なプレイ環境】

ハード PlayStation 5
バージョン ver.1.003
難易度 Normal
クリア時間 約 80 時間(放置抜くと70時間くらい)
トロフィー取得率 66% (プラチナ)


※注意 今回ストーリーや画像など全体的にネタバレ多めです

【良かった点】


◎グラフィック・世界観


実機だと、WebやSNSで観る動画よりもかなり美麗で、シリーズらしいトーンもしっかり維持してあるのでなかなか感動しました。水の透明感がすごい。
特にマナの聖域は白眉で、大密林の中で鳥の群れが羽ばたいているあのパブリックイメージの雰囲気ほぼそのままゲーム内に落とし込まれていて本当に感慨深かったです。2(SoM)はハードの制約、3(ToM)の聖域は初来訪時点で荒れている、LoMは聖域感薄め(に思える)、他シリーズは未プレイなので、しっかり聖性の残ったマナの聖域を歩けたのは実質的に今回が初めてかも。

ここは流石に感慨深かった(載せるか迷ったけどオープニングで映像流れるので)

懐かしい雰囲気のボス①


懐かしい雰囲気のボス② 左は召喚魔法


あと、本作は旧作と比較するとBGM単体の主張が弱めなのですが、聖域だけはどこか懐かしい音色が流れるのも好き。サウンドトラックだと「マナの聖域」「マナの樹」の2曲がそれで、今回もここに帰ってきたんだなぁという感慨に浸れます(双方とも菊田楽曲ではないものの、テイストを完全に踏襲している)。

また世界観も、文化を一から構築しようと細部までこだわっているのが画面から伝わるので、目立たない点ながらもグラフィックと相まって画面づくりの丁寧さに寄与していたと感じます。意外だったのが想像よりLoM要素が多かったこと。


◎そこそこ楽しい育成


3ToMの育成システムがブラッシュアップされ、8クラス×5人=40のクラスチェンジが可能になりました。クラスチェンジはメニュー画面からいつでも可能で、状況に応じて変えたりできます。特技や魔法は「エレメントボード」で一度修得すれば他のクラスでも使用可能なので、ボード画面を見てどう育成するか思案するのが楽しかったです。探索や戦闘も悪くないものの、いちばんストレスが少なく楽しめたのはこの育成でした。



◯探索範囲の広さ


まず最序盤の村(主人公の出身地)ですらそこそこ広く、NPCや宝箱も想像よりずっと多く配置されていて、探索しがいがありました。NPCは状況次第で会話内容が変化するので、JRPGらしい会話体験ができて懐かしかったです(内容は薄めなのでスルーしても問題ない塩梅)。洋ゲーは初来訪時に全会話が選択肢で表示されることが多いと思いますが、それが結構負担に感じるので、懐かしの小出し式も悪くないなと思えました。
またフィールドはもっと広く、3ToMからダイナミックに拡張した感じ。強敵とのレベル差や未開放オブジェクト、特定の精霊の力を借りないと進めない地形などが盛り込まれ、初回訪問時は回りきれないオープンワールド風。ゼノブレイドシリーズが近いと思います。ただそちらほど中身が濃厚ではないので、面倒くささや作業感を感じるときもありますが、しっかり完全新作として進化しているめでたさのほうが大きいです。


◯そこそこのボリューム


メインストーリーだけを追うと短いらしいですが、個人的にはメインだけでもそれなりに長く感じました。序盤は話ものんびり進行でレベル曲線も緩やかなので、これ本当にクリアまでレベル50超えるのか? とハラハラしましたが、ストーリーは意外と長続きし、かつ中盤過ぎあたりからモリモリ経験値が入るようになるので杞憂でした。

可能な限りのサブクエスト(これが難ありなので後述します)を達成してからラスボス突入した結果、クリア時のレベルは73でした。フィールドが広かったり同じ場所を何度も再訪するので、たいていのプレイヤーが想定クリア時間を上回ると思います。もっともプレイ時間が長ければ良いものでもないので、サブクエストは3分の1くらいにしてメインに体験を濃縮してくれたほうが好みではありました。


◯トロフィー/実績の取得しやすさ


面倒な条件のものはごく一部の収集物くらいで、あとはゲームプレイの延長で取れるものばかりです。難易度限定のものはトロフィーの説明文に難易度変更は随時可能の旨を明記してあるという親切さもあり。


【気になった点】

✕ファストトラベルの不便さ・騎乗動物のローディング


大陸単位という珍しい仕様で、大陸内なら基本どこからでも発見済みの地点に飛べるものの、大陸外に行こうとすると一気に面倒になります。

フラミー解禁前に大陸Aのどこかから別の大陸Bの特定地点にファストトラベルする際は、まず大陸Aのどこかの竜脈にアクセスし、そこから海岸に近い場所を選んで、海岸でブースカブーを呼んで大陸Bまで移動し、上陸後ファストトラベルで竜脈へ飛び、そこから目的地へ飛ぶ、という面倒な行程が必要となります。ここで普段なら気にならない数秒のローディングが気になりはじめ、そうなったら終わりです。サイドクエストで大陸を跨いだ収集などを要求された時なんかはもう溜息しかでません。これは素直に竜脈から世界中どこでも飛べるようにして良かったのでは? 


しかし、一番悩まされるのではこれではなく、ピックルやブースカブーやフラミーを呼んだ時に短い登場演出が毎回挟まることです。ピックルは数秒、ワールドマップ勢は召喚から操作可能まで10秒〜15秒とゲームとしてはそこそこの長さです。別の移動手段を呼んだらほぼ即乗れる今のゲームに順応した身には辛いものがあります。こういうのは一見不自然に思えても利便性重視で即動かしたいところ。
これが悪い意味で本領発揮するのがサイドクエスト。中盤辺りから大陸を跨ぐ必要がある達成条件のものが続出するので、これに本腰を入れると数分おきにフラミーを呼んでは飛び、呼んでは飛びを繰り返すことになります。演出スキップしても10〜15秒の演出が挟まるのは苦痛。気分転換にブースカブーを久々に呼んでもそっちにも数秒のアニメーションが挟まります。

呼んで降りて、また呼んで……

そして驚くことに、ブースカブーやフラミーに乗っている時はメニュー画面を開けないのでサイドクエストなどの確認ができない(むしろワールドマップでこそ必要になるのに!)など、不可解な制限にずっと悩まされました。ただ「メニュー画面を見るため」という動機で地上に降り、またすぐにフラミーを呼ぶという30秒程度の無為な時間が発生したときには自分にもゲームにも呆れました。フラミーが解禁されれば移動が楽になるかといえば体感はそこまででもなく、むしろ解禁されたことで世界中どこでもサイドクエストの対象となり面倒さが増した感触です。


確かに、どこでもファストトラベルで行けるようになったらフラミーら騎乗動物はお役御免になってしまうという危惧もわかりますが、それならサイドクエストの数を減らすか不可解な毎回挿入ムービーを排すかなどが必要だったかと思います。ブースカブーやフラミーに乗りたければこちらの判断で乗るので制作陣には安心してほしいです。



✕水増しサイドクエスト


サイドクエストが今時珍しいほどの完全なるお使いで辛かったです。「敵Aを◯体倒せ」という条件ならまだマシな方で、本当にプレイ時間水増しでしかない、受託したら現地へ飛んで簡単なタスクこなしてとんぼ返りみたいな内容の薄いものばかりです。肝心の報酬も有用なのは終盤のクエストの一部で、多くがパッとしないアビリティシードや、このゲームでほぼ無用の長物であるルク(金)なのでやる気も起きないです。


ちなみに本作のルク(金)は本当に存在意義が薄いです。アイテムは宝箱からたっぷり手に入るし、せいぜい装備を最新にするくらいでしょうか。本当に大事なアイテム(エレメントボード系)はニキータの店やクマミツ交換所に並ぶので。SFC版の2と3からして、聖剣はわりかし金に困るタイプのRPGという認識でいましたが極端に振れましたね。


サイドクエストの話に戻ると、こんなに物量は要らないので数を減らして内容を濃くしてほしかったところ。



✕ストーリー


よく本作のレビューで指摘されている、犠牲を是とする価値観が常識改変のごとく人々にあっさり受け入れられているストーリー設定。それらの指摘・批判にほぼ同意します。まさかシリーズお馴染みの大精霊もフェアリーもマナの女神も全員嫌いになるとは思いませんでした(フェアリーと女神は旧作でも賛否両論だった時もあるが……)。


もう序盤から終盤までずっと感じていたのが「なにこのクソ構造に唯々諾々と従ってんの君らは? 」ということ。


あれだけ御子とやらの義務を誇りに思っていたのに三下悪役の言葉であっさり揺らいだ時こそ構造から脱却できるかと期待したのに、その後の展開でうやむやにされて「この世界を永らえるため死地に赴こう!(キラキラ目)」というノリがあっさり復活。せっかく道中で「誰かを犠牲にしてまで存える世界が正しいのか?(大意)」と言われたのにそれもさほど響かずスルー。

と言うか、世界の構造に疑念を持つチャンスが発生した時に限ってストーリー上大きいトラブルが起きて、その対応をしている間に大きな話が後回しにされるイメージです。恐らくストーリー先延ばしのためでしょうが、これ自体が何者かの認識阻害という設定なのでは?と邪推したくらいです。


作中通してマシなことを言っていたり人間らしい行動をしているのはオーリン、シリュウ、三下悪役、ツァルタの老人、あとラスボスくらいで、あとは大多数のキャラクターが2の最序盤でランディを村から追い出したポトス村住人とさして変わらないメンタリティ……とまでは言わないまでも、個人のエゴが糾弾される世界観が洗脳じみていて不気味です。

いや、これはそういう文化・表現として尊重しなければ、と思い直すも、身内がこれから死地に赴くことを共同体一丸となって祝福する人間たちのカルト感に辟易し、大精霊が気安く話しかけてきてもまずこの構造を革めてから話しかけよという気分になり、聖域についたらついたでマナの女神の無責任ぶりに血圧が上がり……


付言すると、御子のシステムが必要になったのは人間の自業自得で、全ての生き物は死んだらマナの循環で世界に還る(ので無駄死にはならない)云々という設定も作中で説明されるのですが、だからといって子どもの死を是としている大多数の人間もその構造を維持している上位存在一派もおかしすぎる。ここを容易に受け入れられないからこそ人間じゃないの?そこに葛藤なりドラマが生じるんじゃないの? と感じます。


構図としては、人間の自己決定を重視する主人公はじめ大多数vs犠牲ありきの構造を否定する敵側、と理解しました。しかしそもそも「御子は世界を循環させるために人間たちが決めた尊い自己決定である」という主人公サイドの回答が歴史の積み重ねで固着してしまった価値観としか思えず、対立軸になっていないと思います。


もう「故国のために散った貴い魂を否定するな!」まであと一駅の地点ですよね。ゲーム内のシュガーコーティングされたような雰囲気に対してかなり危うい表現になっていると思います。JRPGらしく「意志の継承」がさも美談のように語られるものの、前提が誤っているので不幸の再生産にしか映らない。


ライターはそういう戦前チックな思想の持ち主なのか、考えさせられる系を狙ったのか、聖剣シリーズらしく犠牲なくして得るものなしをしたかったのかは不明ですが、申し訳ないが低年齢に開かれたコンテンツに載せるに相応のクオリティと倫理を有していないというのが感想です。そうは言ってもCERO審査は通過しているため公的にはこれで問題ないと判断されたのが事実なのですが、それはそれとして理解に苦しむ内容でした。


少し話はズレますが、展開や構成の雑さ、カタルシスの不足も気になります。貴重らしい精霊器が序盤から案外すんなり手に入ってしまうのも拍子抜けで、その段階から嫌な気配がしていました。

悲痛なシーンのあとにやたら軽妙なノリのイベントがあったり、物語の佳境に差し掛かってプレイヤーとしてもシリアスな気分なのに、滑っている上にしつこいギャグノリイベントがメインに挟まったりと調子外れな展開もあり、こうした連続性の欠如が属性ありきのキャラクター造型と相まって人形感・舞台装置感が強いです。台詞量が少なくても2や3やLoMのほうがよほどキャラクターが生きていました(LoMと比較するのは酷かも知れないが)。


長々と批判を繰り広げましたが悪い点ばかりではないです。オープニングの導入パートや風の神獣の一連のイベントなどそれなりに見られる展開もありますし、スタッフロール後のシーンはベタだけど良かったです。結末から読み取る限りエンディング後の世界はマシな選択をした様子なので、終わり良ければすべて良しとしたいところですが、その方向性にする決断は遅くてもゲーム中盤には済ませたほうがメリハリあるストーリーになったのではないかと思います。



△魅力に乏しいキャラクター


メイン含めキャラクターの魅力が全体的に薄いです。舞台となる世界観設定こそこだわっているのは伝わりますが、キャラクター造型がどうにも属性ありき。端的に言うと「こういうタイプのキャラクターだからこういう行動・言動を取る」から一歩も外れないので、一時が万事「そういう展開」の連続で会話シーンは退屈でした。


メインキャラクターに限っても、モートレア以外は愛着が湧きませんでした。ヴァルとヒナは意志薄弱というか抑圧的でキャラクターというより舞台装置じみている、カリナはうるさい(ここまでマシな組)、パルミナは3のリース需要を当てこんだあからさまなキモオタク向けでナメられたもんだなと思うし、ジュリは言動が達観というより冷笑じみていてカンに触る、ゲスト参戦のアッシュは他者の感情に疎いよくある学者キャラで会話の8割が不快(そういうキャラ付けにせよ)と、終盤になればなるほど会話シーンが辛かったです。

全員間違いなく善性を備えているのですが、その方向が犠牲システムの維持に向いているので愛着など到底湧くはずもありません。彼らが美辞麗句を弄しても、だってあれを良しとする集団なんでしょ? というのは意地悪でしょうか。



△操作性の悪さ・不可解な操作制限


アクションRPGとして、操作性が快適とは言い難いです。戦闘に関して言えばシリーズおなじみのリングコマンドが十字キーに割り当てられていますが、過去作と違いリング自体が動かずスティックを倒して選ぶので、操作が直感的に結びつかず混乱します。幸いにもR1のショートカット機能があるのでそこまで開かなかったですが……


そしてずっと付き纏うのが、×ボタンにジャンプと「調べる」の機能が集約されていることによる操作暴発です。これのお陰で、話しかけたい人の近くでジャンプしてしまう奇行を繰り返すハメになります。また地形やNPCの配置によっては「話す」コマンドが優先されて、ジャンプでその場からなかなか抜け出せないインシデントも発生しました(ファストトラベルで脱出可)。


あとは騎乗動物と同様、生身操作でも細かい操作制限がじわじわ辛いです。

例を挙げると、リザルト表示中の数秒は移動以外の一部の操作を受け付けない、街中や特定のイベント中はパーティー編成(メンバー入れ替え)できないなど、特にリアリティのこだわりとも思えない不可解な制限が付きまといます。



【まとめ】

全体としては教科書的なJRPGという印象です。ゲームとして独創性は感じられないものの全体として無難なので、なんだかんだ遊べてしまう感じ。
最低限のクオリティは担保されており安定していますが、もっと魅力に溢れたゲームが世界には山ほどあることを思うと、シリーズファンでもなければ優先して遊ぶ理由は思いつかないのが率直な感想です。2の世界観や3のキャラクター、LoMの記憶に残るストーリーなどはここになく、シリーズの魅力だった音楽ですら印象に残るのは数曲だけ。肝心のアクション自体も、他作品の滑らかなアニメーションと比較するとカクカク・ペチペチして爽快感に欠けます。最大公約数的なアクションで、つまらなくはないが爽快でもない。ほか不満点は前述の通り。
2024年までシリーズが生き残ったのを寿ぐために(あるいは見届けるために)買う程度のモチベーションで構わないと思います。トロフィー/実績も取りやすいですし。

続編やシリーズ新作は望んでいますが、正直なところアクションゲーム群雄割拠の時代にシリーズがついていけるヴィジョンが見えず、開発スタジオも閉鎖されたので、この時代に完全新作が出ただけでも十分という気持ちはあります。ファイアーエムブレムやペルソナみたいにロゴ刷新大規模リブート、システム大幅刷新とかだと理想的ですがそれは素人目にも厳しそうなので。
とはいえAAA志向洋ゲーが退潮し、AA規模のゲームの再評価の波が来ているらしいので、何かを何とかすれば次に繋がるのではという淡い期待もあります。そう考えると、AAの大成功例として名高いClair Obscur:Expedition 33と本作はそこそこ類似点がありますね。5人パーティーやアクション要素とコマンド要素合わさった戦闘、全体ワールドマップ、自己犠牲の旅をするストーリー(これは両者ともFF10の影響下かも知れないけど)など……この辺にAA再興のヒントがありそうな気がしないでもないですね。

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