ゲームクリア感想312_聖剣伝説 ヴィジョンズオブマナ (PS5版)
【主なプレイ環境】
難易度 Normal
クリア時間 約 80 時間(放置抜くと70時間くらい)
【良かった点】
◎グラフィック・世界観
ここは流石に感慨深かった(載せるか迷ったけどオープニングで映像流れるので) |
懐かしい雰囲気のボス① |
懐かしい雰囲気のボス② 左は召喚魔法 |
◎そこそこ楽しい育成
◯探索範囲の広さ
◯そこそこのボリューム
◯トロフィー/実績の取得しやすさ
【気になった点】
✕ファストトラベルの不便さ・騎乗動物のローディング
大陸単位という珍しい仕様で、大陸内なら基本どこからでも発見済みの地点に飛べるものの、大陸外に行こうとすると一気に面倒になります。
フラミー解禁前に大陸Aのどこかから別の大陸Bの特定地点にファストトラベルする際は、まず大陸Aのどこかの竜脈にアクセスし、そこから海岸に近い場所を選んで、海岸でブースカブーを呼んで大陸Bまで移動し、上陸後ファストトラベルで竜脈へ飛び、そこから目的地へ飛ぶ、という面倒な行程が必要となります。ここで普段なら気にならない数秒のローディングが気になりはじめ、そうなったら終わりです。サイドクエストで大陸を跨いだ収集などを要求された時なんかはもう溜息しかでません。これは素直に竜脈から世界中どこでも飛べるようにして良かったのでは?
しかし、一番悩まされるのではこれではなく、ピックルやブースカブーやフラミーを呼んだ時に短い登場演出が毎回挟まることです。ピックルは数秒、ワールドマップ勢は召喚から操作可能まで10秒〜15秒とゲームとしてはそこそこの長さです。別の移動手段を呼んだらほぼ即乗れる今のゲームに順応した身には辛いものがあります。こういうのは一見不自然に思えても利便性重視で即動かしたいところ。
これが悪い意味で本領発揮するのがサイドクエスト。中盤辺りから大陸を跨ぐ必要がある達成条件のものが続出するので、これに本腰を入れると数分おきにフラミーを呼んでは飛び、呼んでは飛びを繰り返すことになります。演出スキップしても10〜15秒の演出が挟まるのは苦痛。気分転換にブースカブーを久々に呼んでもそっちにも数秒のアニメーションが挟まります。

呼んで降りて、また呼んで……
そして驚くことに、ブースカブーやフラミーに乗っている時はメニュー画面を開けないのでサイドクエストなどの確認ができない(むしろワールドマップでこそ必要になるのに!)など、不可解な制限にずっと悩まされました。ただ「メニュー画面を見るため」という動機で地上に降り、またすぐにフラミーを呼ぶという30秒程度の無為な時間が発生したときには自分にもゲームにも呆れました。フラミーが解禁されれば移動が楽になるかといえば体感はそこまででもなく、むしろ解禁されたことで世界中どこでもサイドクエストの対象となり面倒さが増した感触です。
確かに、どこでもファストトラベルで行けるようになったらフラミーら騎乗動物はお役御免になってしまうという危惧もわかりますが、それならサイドクエストの数を減らすか不可解な毎回挿入ムービーを排すかなどが必要だったかと思います。ブースカブーやフラミーに乗りたければこちらの判断で乗るので制作陣には安心してほしいです。
これが悪い意味で本領発揮するのがサイドクエスト。中盤辺りから大陸を跨ぐ必要がある達成条件のものが続出するので、これに本腰を入れると数分おきにフラミーを呼んでは飛び、呼んでは飛びを繰り返すことになります。演出スキップしても10〜15秒の演出が挟まるのは苦痛。気分転換にブースカブーを久々に呼んでもそっちにも数秒のアニメーションが挟まります。
✕水増しサイドクエスト
サイドクエストが今時珍しいほどの完全なるお使いで辛かったです。「敵Aを◯体倒せ」という条件ならまだマシな方で、本当にプレイ時間水増しでしかない、受託したら現地へ飛んで簡単なタスクこなしてとんぼ返りみたいな内容の薄いものばかりです。肝心の報酬も有用なのは終盤のクエストの一部で、多くがパッとしないアビリティシードや、このゲームでほぼ無用の長物であるルク(金)なのでやる気も起きないです。
ちなみに本作のルク(金)は本当に存在意義が薄いです。アイテムは宝箱からたっぷり手に入るし、せいぜい装備を最新にするくらいでしょうか。本当に大事なアイテム(エレメントボード系)はニキータの店やクマミツ交換所に並ぶので。SFC版の2と3からして、聖剣はわりかし金に困るタイプのRPGという認識でいましたが極端に振れましたね。
サイドクエストの話に戻ると、こんなに物量は要らないので数を減らして内容を濃くしてほしかったところ。
✕ストーリー
よく本作のレビューで指摘されている、犠牲を是とする価値観が常識改変のごとく人々にあっさり受け入れられているストーリー設定。それらの指摘・批判にほぼ同意します。まさかシリーズお馴染みの大精霊もフェアリーもマナの女神も全員嫌いになるとは思いませんでした(フェアリーと女神は旧作でも賛否両論だった時もあるが……)。
もう序盤から終盤までずっと感じていたのが「なにこのクソ構造に唯々諾々と従ってんの君らは? 」ということ。
あれだけ御子とやらの義務を誇りに思っていたのに三下悪役の言葉であっさり揺らいだ時こそ構造から脱却できるかと期待したのに、その後の展開でうやむやにされて「この世界を永らえるため死地に赴こう!(キラキラ目)」というノリがあっさり復活。せっかく道中で「誰かを犠牲にしてまで存える世界が正しいのか?(大意)」と言われたのにそれもさほど響かずスルー。
と言うか、世界の構造に疑念を持つチャンスが発生した時に限ってストーリー上大きいトラブルが起きて、その対応をしている間に大きな話が後回しにされるイメージです。恐らくストーリー先延ばしのためでしょうが、これ自体が何者かの認識阻害という設定なのでは?と邪推したくらいです。
作中通してマシなことを言っていたり人間らしい行動をしているのはオーリン、シリュウ、三下悪役、ツァルタの老人、あとラスボスくらいで、あとは大多数のキャラクターが2の最序盤でランディを村から追い出したポトス村住人とさして変わらないメンタリティ……とまでは言わないまでも、個人のエゴが糾弾される世界観が洗脳じみていて不気味です。
いや、これはそういう文化・表現として尊重しなければ、と思い直すも、身内がこれから死地に赴くことを共同体一丸となって祝福する人間たちのカルト感に辟易し、大精霊が気安く話しかけてきてもまずこの構造を革めてから話しかけよという気分になり、聖域についたらついたでマナの女神の無責任ぶりに血圧が上がり……
付言すると、御子のシステムが必要になったのは人間の自業自得で、全ての生き物は死んだらマナの循環で世界に還る(ので無駄死にはならない)云々という設定も作中で説明されるのですが、だからといって子どもの死を是としている大多数の人間もその構造を維持している上位存在一派もおかしすぎる。ここを容易に受け入れられないからこそ人間じゃないの?そこに葛藤なりドラマが生じるんじゃないの? と感じます。
構図としては、人間の自己決定を重視する主人公はじめ大多数vs犠牲ありきの構造を否定する敵側、と理解しました。しかしそもそも「御子は世界を循環させるために人間たちが決めた尊い自己決定である」という主人公サイドの回答が歴史の積み重ねで固着してしまった価値観としか思えず、対立軸になっていないと思います。
もう「故国のために散った貴い魂を否定するな!」まであと一駅の地点ですよね。ゲーム内のシュガーコーティングされたような雰囲気に対してかなり危うい表現になっていると思います。JRPGらしく「意志の継承」がさも美談のように語られるものの、前提が誤っているので不幸の再生産にしか映らない。
ライターはそういう戦前チックな思想の持ち主なのか、考えさせられる系を狙ったのか、聖剣シリーズらしく犠牲なくして得るものなしをしたかったのかは不明ですが、申し訳ないが低年齢に開かれたコンテンツに載せるに相応のクオリティと倫理を有していないというのが感想です。そうは言ってもCERO審査は通過しているため公的にはこれで問題ないと判断されたのが事実なのですが、それはそれとして理解に苦しむ内容でした。
少し話はズレますが、展開や構成の雑さ、カタルシスの不足も気になります。貴重らしい精霊器が序盤から案外すんなり手に入ってしまうのも拍子抜けで、その段階から嫌な気配がしていました。
悲痛なシーンのあとにやたら軽妙なノリのイベントがあったり、物語の佳境に差し掛かってプレイヤーとしてもシリアスな気分なのに、滑っている上にしつこいギャグノリイベントがメインに挟まったりと調子外れな展開もあり、こうした連続性の欠如が属性ありきのキャラクター造型と相まって人形感・舞台装置感が強いです。台詞量が少なくても2や3やLoMのほうがよほどキャラクターが生きていました(LoMと比較するのは酷かも知れないが)。
長々と批判を繰り広げましたが悪い点ばかりではないです。オープニングの導入パートや風の神獣の一連のイベントなどそれなりに見られる展開もありますし、スタッフロール後のシーンはベタだけど良かったです。結末から読み取る限りエンディング後の世界はマシな選択をした様子なので、終わり良ければすべて良しとしたいところですが、その方向性にする決断は遅くてもゲーム中盤には済ませたほうがメリハリあるストーリーになったのではないかと思います。
△魅力に乏しいキャラクター
メイン含めキャラクターの魅力が全体的に薄いです。舞台となる世界観設定こそこだわっているのは伝わりますが、キャラクター造型がどうにも属性ありき。端的に言うと「こういうタイプのキャラクターだからこういう行動・言動を取る」から一歩も外れないので、一時が万事「そういう展開」の連続で会話シーンは退屈でした。
メインキャラクターに限っても、モートレア以外は愛着が湧きませんでした。ヴァルとヒナは意志薄弱というか抑圧的でキャラクターというより舞台装置じみている、カリナはうるさい(ここまでマシな組)、パルミナは3のリース需要を当てこんだあからさまなキモオタク向けでナメられたもんだなと思うし、ジュリは言動が達観というより冷笑じみていてカンに触る、ゲスト参戦のアッシュは他者の感情に疎いよくある学者キャラで会話の8割が不快(そういうキャラ付けにせよ)と、終盤になればなるほど会話シーンが辛かったです。
全員間違いなく善性を備えているのですが、その方向が犠牲システムの維持に向いているので愛着など到底湧くはずもありません。彼らが美辞麗句を弄しても、だってあれを良しとする集団なんでしょ? というのは意地悪でしょうか。
△操作性の悪さ・不可解な操作制限
アクションRPGとして、操作性が快適とは言い難いです。戦闘に関して言えばシリーズおなじみのリングコマンドが十字キーに割り当てられていますが、過去作と違いリング自体が動かずスティックを倒して選ぶので、操作が直感的に結びつかず混乱します。幸いにもR1のショートカット機能があるのでそこまで開かなかったですが……
そしてずっと付き纏うのが、×ボタンにジャンプと「調べる」の機能が集約されていることによる操作暴発です。これのお陰で、話しかけたい人の近くでジャンプしてしまう奇行を繰り返すハメになります。また地形やNPCの配置によっては「話す」コマンドが優先されて、ジャンプでその場からなかなか抜け出せないインシデントも発生しました(ファストトラベルで脱出可)。
あとは騎乗動物と同様、生身操作でも細かい操作制限がじわじわ辛いです。
例を挙げると、リザルト表示中の数秒は移動以外の一部の操作を受け付けない、街中や特定のイベント中はパーティー編成(メンバー入れ替え)できないなど、特にリアリティのこだわりとも思えない不可解な制限が付きまといます。
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